見えている世界の違い



来院された時、毎回、血圧を測ってメモ渡してくれる自閉症の青年。彼の目にはデジタルの数字はこのように見えているのでしょう。彼と私の見ているもの、世界の違いを実感します。

何かを見た時の脳の活動部位の違いなのです。周りの世界の認知が、認知の対象への独自の認知から始まるようです。

自閉症のテンプル・グランディン博士の本の中に「カナヅチ」の認知の仕方が書いてありましたが、まず、木の棒が見える。それをたどっていくと金属の塊が見える、そして全体が見えて「カナヅチ」と理解できる、のだそうです。

この作業を頭の中で行なっていくので、パッと見てなんだかわかる私とは、理解までの間にずれがある、タイムラグがあると思います。

ですから、歯の治療で、これ使うね、こんなふうと見せても、たとえ「まだ見て理解するように生まれついた」彼らでも、タイムラグを考えてあげなければいけないのです。そのためには、待ってあげる。わかるまで、待つという姿勢が大事なように思います。

デジタルの数字も、この自閉症の青年には、私が見えない点滅が見えているのでしょう。

このメモを見るたびに、私たちは、彼らと見ているものが違う、丸を丸と見ていないかもしれない、彼らの見ている世界を理解することがとても大切なように思えます。