障害者歯科学会①



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歯科治療の身体抑制に関すること
 
いま、抑制されて治療ができなくなったASDのちびっこのフォローをしてる。
こういうちびっこは後を絶たない。
 
ASDのちびっこのお母さんたちは、彼らが忘れないことをとてもよくわかってる。丁寧に説明したら、お母さんは同意するかなぁ、したとしても、きっとこの子は障害があるからとあきらめで返事すると思うし、絶望感でいっぱいと思う。 
 
面談すると、ご迷惑でしょうがと目に涙をためるお母さんがとたくさん出会うもの。
 
障害があるから歯医者なんて無理って思わせるなんて、絶対いけない。
ああ、来て良かった、しっかり定期検診しよう、もう虫歯作らないぞってって心が軽くなるようにしたいよ。それが歯医者のプライドだと思う。
 
「抑えますよ」の一言で、アミ(レストレーナー)で固定された子。
歯ブラシで、溝が黒いのが気になったお母さんは、心配で特に痛みもなかったようだけど、歯医者さんに連れて行った。
このちびっこは、構造化した環境を作ることで、椅子に座ってぐちゅぐちゅぺまで、できるようになった。お口も見せてくれる。でも、フラッシュバックがあり、ちょっとした音で逃げ出してしまう。
絡んだ糸をほぐすのはまだ時間はかかりそう。この子がお口の健康を守ることができるよう、ゆっくり絡んだ糸をほぐしていかないといけない。
 
全身麻酔、薬物抑制を含めて抑制をするのかしないのか、その子が、その方が本当にできないのかどうか。
たとえは、自閉症のお子さんはできないと決めつけてしまうと何にもできない。
自閉症だから、障害者だから全身麻酔、抑制ではなく、しっかり環境を作ってあげてトレーニングして椅子に座れて歯ぶらしできて、こんなにできる子だから、歯を削ったり、嫌なことは無しにして一回で終わって自分の力できるようにしようねって伝えてあげたい。予防しながら、練習して行きたいよね。
 
歯の治療も、歯ブラシもその子が、その方が、生活の中で苦痛じゃなくて、自分の健康が守れるようにしていきたい。
歯を削る技術とか詰める技術云々でなくて、私たちが行うべきは生活支援でもあることを忘れちゃいけない。
 
障害を前提に、抑制するかしないかじゃなくて、必要か必要じゃないかじゃない?
 
どんな時に抑制するかしないかのガイドラインってなんだろう?
パネリストもガイドラインって言葉は嫌だとおっしゃってたけど、私もほんとだなって思った。
 
目の前にいるその方の人権を考えたら、アミに入れる?抑えつける?
忘れない、PTSDを起こすかもしれない子供を前に、アミに入れる?
 
それは私たちの心の問題じゃないかな。
 
私も抑制することは確かにある。めったにないけど、2歳ぐらいでぜーんぶ虫歯で痛くてご飯も食べれなくて、定型発達のお子さん。
この地域は障害のない小児の全身麻酔をしてくれるところはないからする。それ以外はしない。
 
お話ししながら、お母さんもそばにいて励ましてもらって、最後はみんなで笑顔で終わるようにしてするけど、本当はね、心が痛いんだよ。
ちびっこには、ゴメンねって心の中で手を合わせてる。後味は決して良くない。
 
でも、人間は慣れてしまうから、即、抑制してたら、それが当たり前になったら、術者がやりやすい方取っちうのかもね。
 
苦しむ人を前に、それが当たり前、障害があるから当たり前ってなったら悲しい。
ご本人やご家族の辛さや苦しみを受け取れる感性を、私は医療者として養い続けていきたいなと思う。