心に響いたシンポジウム



9月30日~10月2日 第33回日本障害者歯科学会総会および学術大会でした。

私は1日から参加しました。

その中で特に心に響いたシンポジウムがあります。

それは「障害者歯科に必要な権利擁護の視点」というシンポジウムでした。

人は誰でも健康に安心に過ごす権利があります。

歯科治療においてもそうです。安心して、快適な治療を受ける権利があります。

 

でも、時々、押さえつけられて無理やり口をあけられて、

心にトラウマを作ってしまったお子さんに出会うのも現実です。

 

確かに虫歯があると治療を受けなければなりません。

しかし発達に凸凹のある子どもたち、知的や身体的にハンディーのある子どもたちは

歯科の現場では苦手なことが多いのです。

 

例えば、診療台の背板が倒せない、音が苦手、水でおぼれてしまう、

痛みに敏感、頑張ろうとすればするほど意に反して体が動いてしまう等々です。

 

そして、抵抗して押さえつけられて泣きながら治療を受けることも

少なくないでしょう。

 

治療に協力できない患者さんの歯科治療で、ほとんどためらいなく身体抑制を

考えてきたのではないでしょうか。当然、麻酔や鎮静も薬物を用いた鎮静なのです。

 

でも、その時、患者本人や保護者の意思はどうだったのでしょう。

 

 

医院の外来には自閉症のお子さんや重度の心身障害のある方々が来院されます。

でも、障害があるからと区別はしていません。

わかっているとか、わかっていないとかにかかわらず、お話をして説明をしながら治療します。

区別しているとしたら、視覚支援が必要だとか、肢体不自由のある方への支援とかそういうことです。

 

私はほとんで抑制をしません。

 

本人の意思を確かめます。

「わからない人にどうするの?」と思われるかもしれません。

○×で選んでもらいます。

○を選んだときは、どんなに知的なハンディーが重度でもしっかり頑張ってくれます。

×の時は絶対口をあけてくれません。

彼らの意思はとてもはっきりしています。

 

「わからない」と思う前に、彼らとのコミュニケーションを大切にしていくと

きっとご本人の意思が伝わってきます。

 

でも、現場ではうまくいかないこともあるし、やはり抑えなければならないときもあります。

 

その時に「権利とはすべての人が人として当然受けるべきものであり、

障害があるからとかないからとかは関係ないのだ。

医療は特別だということもない。どんな場合でもその人の権利を

保障されなければならない。」

このことを念頭に置いて、考え方を持って診なければならないと

実感しています。

 

それが当たり前の歯科医療が提供できるようになればとてもうれしいです。